前回の記事では、「電流が磁場を生じること」と、「電流が磁場から力を受けること」を確認しました。では、逆に、磁場から電流を生じさせることができるでしょうか。
この現象を、電磁誘導(Electromagnetic Induction)といいます。今回はこの電磁誘導の基本的なしくみを説明します。
電磁誘導のしくみ
電磁誘導とは
電磁誘導とは、磁場が変化することでコイルに電流が流れる現象です。
具体的に磁石をコイルに近づける場合を考えます。
✔ 磁場が変化すると、コイルに電流が流れる(電磁誘導)
N極をコイルに近づけると?

1.磁束の変化
磁石のN極をコイルに近づけると、コイル内の磁束が増えます(①)。
✔ 磁石を近づけると、コイル内の磁束が増える
2.コイルの反応(レンツの法則)
コイルは磁束の変化を嫌う性質を持っており、磁束が増えた場合にはそれを打ち消すため、逆向きの磁場を生じさせようとします(②)。
この結果、コイル側のN局側がN極の向きになり、磁石が反発するように働きます。
✔ コイルは、磁場の変化を打ち消す方向に磁場をつくる(レンツの法則)
3.電流が流れる(誘導電流)
磁場を生じさせるためにコイルに電流(誘導電流)が流れます(③)。
この電流の方向の決定は右ねじの法則に従い、親指を②磁場の方向に向けると、他の四本の指が示す方向に電流が流れます(緑矢印)。
✔ 磁場を生じさせるために、コイルに電流(誘導電流)が流れる

誘導起電力とは
コイルに電流が流れるということは、コイル内に電位差が生じているということを意味します。
この磁場の変化によって発生する電位差を、誘導起電力といいます。
例えば先の図で言えば、電流はコイルの上から出て下に入る方向に流れる(緑矢印方向)ため、コイルの上端が+(高電位)、下端が-(低電位)となり、電池のような状態になっています。
この関係は、ファラデーの電磁誘導の法則によって表されます。
ファラデーの電磁誘導の法則
ε=ーN・ΔΦ/Δt
ε:誘導起電力[V]
N:コイルの巻数
ΔΦ/Δt:磁束の時間変化率
ここで、Δ(変化率)が出てくることからも分かるように、磁石が静止している場合にはコイルの磁束に変化がなく、電流は流れません。
磁石が動いている間だけ、つまり、磁場の変化が生じるときのみ電流が流れるのが、電磁誘導の特徴です。
✔ 磁場の変化が生じるときのみ、電流が流れる
N極をコイルから遠ざけると?
今度は、N極をコイルから遠ざける場合を考えます。

1.磁束の変化
磁石をN極から遠ざけると、コイル内の下向きの磁束が減少します。
2.コイルの反応(レンツの法則)
コイルはこの変化(磁束の減少)を打ち消そうと、今度はN極からの磁束を増やす方向に磁場を生じさせます(この図であれば下向き)。
今回は、コイル側のN局側がS極の向きになり、磁石を引き寄せるように働きます。
3.電流が流れる(誘導電流)
電場の変化を補うため、コイル内の電流の向きも逆転します。
✔ 磁場の変化の方向によって、誘導電流の向きも変わる。
まとめ
- 磁場が変化すると、コイル内に電流(誘導電流)が流れる(電磁誘導)。
- コイルは磁束の変化を打ち消す方向に電流を流す(レンツの法則)。
- 磁石が静止しているだけでは電流は流れず、動かしたときのみ電流が発生する。
- この現象が、発電機やワイヤレス充電の基礎原理になっている。
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