見直しの見直し

focus dictionary index page 特許明細書

前回自力翻訳に関し、ブログでヒントをいただきありがとうございます。

During exposure, the substrate table is moved relative to the immersion system (and the projection system).
This may cause the immersion liquid within the immersion system to move up the gap, e.g., in the direction of travel of the substrate.
Thus, when the substrate is moved through a scanning or stepping motion, the direction of movement of the substrate changes.
Because the immersion liquid in the gap moves with the movement of the substrate, the movement causes the local level of the immersion liquid in the gap to change.
The movement of the immersion liquid is referred to as sloshing.
If the movement is sufficiently large, the pressure on the immersion liquid may be sufficient to cause the liquid to overflow onto the top surface of the liquid confinement system.

構造確認

ブログを書いた当初、まず静止画としての構造理解に精一杯で、この一連の文章が示している動き(動画)の再現にまでは至ることなく日本語にしてしまっていました。

初めに図面を確認して「液体が液体を超えて溢れる」のではなく、「物理的に存在する液体保持システムを超えて溢れる」という構造を理解したところで思考が止まり、それが実際にどのような状況かまで踏み込めていませんでした。

ヒントをいただいてから改めて前後を読み返すと、「何の動き?」という視点が抜けていて文章同士が頭の中でつながっていませんでした。

ここでは露光中に(液浸液に対して相対的に)基板がx-y平面で移動し、その上に張られた液体が揺れ(スロッシング)を起こし、液体保持システムの上面を超えて溢れる可能性がある、という話でした。

ざっくりしたイメージで言うと、基板の揺れが起き(=水槽を揺らす)、その影響で液体が波立ち(=水面が波立ち)、その波が液体保持システムを越える(=水槽の壁を越える)、という理解です。

とすると、この”the pressure on the immersion liquid “は圧力、としてよいのか疑問がわきます。

そこでヒントにあったように英英辞典をひくと、”pressure”は”continuous physical force exerted on or against an object by something in contact with it”[Oxford Dictionary]とあります。

であれば、この箇所は「圧力」でも良いけれど「物理的な力」という訳にすると、より誤解の少ない表現になるかもしれないと考えました。

sufficient to cause

“may be sufficient to cause the liquid to overflow”については、自分では何の問題意識をも持たず「十分」と訳していました。

改めて読み返し、まず「動きが十分に大きい」「溢れるのに十分」といった表現は、そもそも日本語として理解しにくいにも関わらず、曖昧なままに流していたことに今更ながら気づかされました。明らかに英語の語を日本語に置換しただけで、文全体の意味に対する感度が低い状態でした。

さらにsufficientは、” enough to meet the needs of a situation or a proposed end“[merriam-webster]とあるように、あくまで目的・結果に対して必要な程度、という相対的な意味です。「十分」とすると何か画定した客観的な基準を満たすような印象を与えてしまい、目的・結果を引き起こすかもしれない条件を満たす、というニュアンスが霞んでしまうのだと理解しました。

“sufficient”を「十分」とすることが妥当な場合もあると思いますが、今回の箇所では読みにくく、置換する自分を反省すべき結果となりました。

final element

この明細書でも繰り返し登場する”element”という用語について、最後まで「要素」と訳すか「素子」と訳すかで迷いました。

文脈から判断すると、これは「投影システムの先端部」つまり光学系の最終部分を指すのだろうと考えました。そうであれば光学部材としての「素子」が技術的にもふさわしいとも思いました。

ただ「素子」とすると光学的な専門性が強く感じられ、「要素」は馴染み深く、自分としても心理的ハードルが低く感じられました。結果として、「投影システムの一構成部分」としてのニュアンスを取って「要素」と訳しました。

しかし振り返ると、「要素」では少し漠然としており、特に露光システムで液体と接する部分である以上、レンズなどの光学部材が想定されている可能性が高く思われます。実際の案件では指定指定があることも多いと思いますが、今回は「素子」とするほうが適当だったように思います。

まとめ

当たり前のことなのですが、気づけないと直せない。改めて痛感しました。

ヒントをいただき読み返してみると、時間もかかり、精度も甘い。自分の言葉の感度に低さにがっくりします。ですがそれも含めて「今の自分を知ること」が成長の一歩二なると自分に言い聞かせています。

今回も、必要な知識を瞬時に取捨選択できるレベルにはまだまだ遠く、疑問にぶつかるたびに立ち止まり、掘り下げ、調べ、ようやく納得できる、という繰り返しでした。

なぜこんなに時間がかかるのか、と悔しい気持ちも湧きます。
PCに向かって考えているうちに眉間のしわがどんどん深くなっていくのを感じますが、しわを伸ばしつつ、自分の解像度を少しでも上げていきたいと思います。

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