なぜシールドが必要か
ここまでで、プラズマがどのようにウエハ表面をエッチングするかを見てきました。
エッチングはエッチングチャンバという低圧の密封空間で行われますが、ガスなのでチャンバ内に自然に広がります。
しかし削りたいのは、ウエハ表面のパターンが露出した部分だけです。
そのため、プラズマをチャンバ全体ではなく電極間の必要な領域に集中させたいというニーズがあります。
ここで問題になるのが、チャンバ内壁が金属製で0 V(等電位面)として存在するという点です。
補足:等電位面とは
等電位面とは、どこを測っても電位が同じになる面のことです。
導体では内部電場は0となり、電荷が表面に留まるので、内部の電位は同じになります。
「面」と表現されるのは、電場が三次元空間に広がるためです。地図で言う等高線の三次元バージョンのように考えるとイメージしやすいです。
チャンバ壁はなぜ0Vになるのか
エッチングチャンバは金属(導体)でできており、導体内部の電場は0です。
導体内部では電場が0なので、電荷は表面のみに分布する状態に落ち着きます。
さらにチャンバは一般に接地(グラウンド)されているため、導体内では電位差がなく、全体が同一の電位(0V)になります。
帯電した粒子が内壁に触れると、その電荷はグランドへ流れていくので、チャンバ内壁が過度に帯電することはありません。その結果、チャンバ内壁は巨大な0Vの等電位面として安定して存在します。
チャンバが金属で接地されている場合、導体内のどの地点でも電位は0Vになり、内壁全面が等電位面となります。
等電位面があると電界が広がる
電界は高い電位から低い電位へ向かい、その向きに沿って力が働きます。
チャンバ内壁はどこをとっても0Vなので、電極間に作られた電界は、その低い電位(チャンバ内壁)の方向へと広がります。そのため、プラズマ中の荷電粒子(電子・イオン)もチャンバ全体に広がりやすくなります。
結果として、ウエハ上だけを効率よくエッチングするという目的から外れてしまいます。
そこでシールド
そこで、電界の境界を再設定し直し、プラズマを電極間に閉じこめることによってエッチングをピンポイントでウエハ表面に絞って処理することが可能になる工夫として導電性シールドが使われることがあります。
シールドとは何か
RIEでいうシールドとは、電界が広がってしまう不都合に対して、プラズマが必要な領域にだけ存在するように誘導するための部材の総称です。
先日の明細書では、先行技術として導電性シールド(conductive shield)が、本発明として誘電体シールドが提示されていました。
導電性シールド
導電性シールドは、導電体を電極近くに配置することで、電極近傍に新しい0Vの等電位面を作って電界の拡がりを電極付近に限定する方法です。
誘電体シールド
これに対して、前回取り上げた明細書では、石英の誘電体リングを複数重ね、スリット部で荷電粒子を中和させる構造が提案されていました。
いずれも目的は同じで、チャンバ壁に電界が逃げてしまうのを防ぎ、プラズマを必要領域に閉じ込めることにあります。
おわりに
今回このテーマを取り上げた理由は、以前の明細書で
“This shield serves to effectively bring ground potential close to the other electrode.”
の意味を捉えかねたからでした。
当初、グランド(0V)と等電位面(0V)が混ざってしまい、シールドを置いてなにが変わるのか明確に説明できませんでした。
現在の理解では、接地電位(ground potential)は装置内ただ一つある基準点であり、等電位面はシールドの配置によって新しい0Vの面として機能させることができる、という違いを抑える必要があったと考えています。
まとめ
- 金属チャンバ内壁は、0Vの等電位面として機能する。
- 電界は、低電位のほうに広がり、その結果プラズマも広がってしまう。
- そこで、電界の境界を引き直すためにシールドを用いる。
参考文献
わかりやすい高校物理の部屋『等電位面』
http://www.wakariyasui.sakura.ne.jp/#google_vignette(閲覧日:2025/11/30)

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