前回は、ウェット/ドライ、スパッタ/プラズマ/RIEというエッチング方式の概要を確認しました。
今回は、その中でもよく用いられるRIEにおけるプラズマにフォーカスしてみます。
プラズマエッチングで何が起きているか
半導体エッチングにおけるプラズマとは、導入したエッチングガスが電離・解離して電子・イオン・ラジカルなどの粒子に分かれた反応性の高い気体状態です。
RIEのエッチングでは、以下の二段階が必要です。
- プラズマを生成・維持する
- 生成されたイオン・ラジカルがウエハの表面をどのようにエッチングするか
平行平板型RIEエッチング装置
代表的な平行平板型RIEをもとに説明します。
2枚の電極(上部電極と下部電極)を向かい合わせに平行に配置し、下部電極(サセプタ)は高周波電源(RF電源)を接続し、ウエハを載置するステージとして機能します。金属製のチャンバはこの周りを囲むように存在します。
- 上部電極:接地(グランド)側の電極。回路の基準電位となる。
- 下部電極:高周波電源(RF電源)を接続し、ウエハを載置するサセプタ。

プラズマ生成に関わる構成要素であるガス供給系・電源・真空系を順に見ていきます。
ガス供給系
エッチングに使うガスをチャンバ内に導入しますが、その際にはエッチングしたい被加工物に応じてガスを選択します。たとえば、
- 酸化シリコン膜(SiO₂)のエッチングには、CF₄, CHF₃, SF₆ などの フッ素系
- ポリシリコンや金属のエッチングは、Cl₂, BCl₃ などの 塩素系
これらは電離・解離によって、イオンやラジカルになりエッチング反応の主体となります。
電源
次に、プラズマを生成するためのエネルギー源として、電源が必要になります。
RIEでは、向きが一方向(大きさも一定)のままの直流(DC)ではなく、向きも大きさも周期的に反転し続ける交流(AC)の高周波電圧(RF)が使われます。
高周波電圧であれば電子を周期的に加速でき、プラズマを持続できるからです。
たとえば、高周波電圧でよく用いられるのは13.56MHzですが、これは1秒間に約13,560,000回電界の向きが振動していることを意味します。2つの電極間に高周波電圧が印加されると、電場分布はその速度で変化するため電子は加速され、プラズマ源となるガスの分子・原子に衝突、電離・解離してプラズマを生成します。
※13.56 MHz は ISM バンドであり、産業用として世界的に使用が許可されている周波数です。
真空系
RIEのエッチングチャンバ内は、数 Pa〜数十 Pa 程度の低圧に設定されます。
ガスの分子や原子の平均自由行程(Mean Free Path、何にもぶつからずに進める距離)を伸ばすことでプラズマの電離・加速が制御しやすくなるためです。
また、気体は圧力を下げていくと、ある範囲では放電(電離)が起きやすくなるため、決められた空間で安定したプラズマを維持するには、圧力とガス組成を精密に制御できる真空系(低圧環境)が必須です。
プラズマの中身
電極間に高周波電圧が印加されてガスを電離・解離すると、チャンバ内には、電子(e–)、イオン(正イオンがメイン)、ラジカル(F, Clなど中性の活性種)、励起状態の分子・原子、反応生成物(中性分子)、のような種が存在することになります。
プラズマは、全体として+と-とがほぼ同数であり準中性の気体と言われますが、局所的には固体の表面などで電荷が偏った層ができます。
ウエハ近傍はどうなっているか
※上にのべた構成(下部電極にRF電源、上部電極がRFの戻り側/グランド)を前提にしています。
プラズマ生成の第一歩
電源により電極間に高周波電圧が印加されると、その電位差に応じた電場が電極間に生じます。高周波電圧ではこの電場の向きが高速で反転するため、電場分布も周期的に切り替わります。
この電場によってチャンバ内にもともとわずかに存在する電子(初期電子)が加速され、ガスの分子や原子と衝突、電離を引き起こします。生じた電子もさらに電場で加速され、電離が連鎖して進みます。この電離の連鎖によってプラズマが生成、こうなってしまえば高周波電圧がかかっている限り、ガスから生じた電子が電場で加速され続け、プラズマ状態が維持されます。
以下の図は、この衝突・電離によるプラズマ生成を示すものです。
※図は、直流(DC)放電を想定しておりアノードとカソードが固定されています。
ただし電子が電場によって加速され、ガスと衝突して電離が連鎖的に進む、という基本的な原理はRIEの高周波放電でも共通しています。
高周波電圧では極性は固定されず、短時間で電場の向きが反転します。

(『プラズマの生成と制御』プラズマエレクトロニクス分科会会報)
電子は先に進む
こうして生成されたプラズマのうち、エッチングで活躍する、荷電粒子であるイオンと電子がその後それぞれどのように動くかに着目してみます。
プラズマが生成されたあともこの正負の極性反転のたびに、両方が電極に対して引き寄せられるように電場内で動きます。ただ、
- 電子は非常に軽く、電場の高速反転についていける一方、
- イオンは質量が大きく、高速振動に追従できない
という違いがあります。
そのため、電子の方がイオンよりも早くかつ大量に下部電極側に到達し、固体表面(ウエハ)に負電荷として蓄積します。
こうして高速かつ大量に電子がウエハ表面に到達して負に帯電し、今度はこれ以上の電子は同極同士として反発、ウエハ表面近傍に近づけなくなります。
シースとその電位分布
ウエハ表面が負に帯電すると、表面近傍のプラズマ側では電子密度が低くなります。
本来準中性であるプラズマにおいて、こうして電子密度が減少して結果的に正電荷が多くなる(電荷密度の偏った)領域がシース( sheath)です。
少し整理すると、電荷密度は次のようになります。
- プラズマ(バルク):準中性(正負がほぼ等しい)
- シース(表面近傍):電子が欠乏しており、相対的に正電荷が多い
- ウエハ表面:電子が多く、強く負に帯電している

電荷の正負の偏りと、電位が高い・低いことは別の話です。
電位はプラズマ側が高く、ウエハの電位は低いという相対的な関係にあります。
そのため、その間のシースは電位が必然的に下り坂になって、ここがイオンが加速される落差として働くのかなというのが今の理解です。図解すると次のようなイメージです。

イオンのはたらき
先ほど述べたように電子より質量が圧倒的に大きい正イオンは、少し遅れてシース近傍に到着しますが、反対電荷を有するため、負に帯電したウエハに強く引き寄せられるとともに、この電位の坂により加速し、ウエハに垂直方向に衝突します(なお、この衝突が前回の記事に書いた物理寄りのエッチングで、RIEにおいて物理エッチングに相当するプラズマのはたらきです)。
イオンとラジカルの役割分担(前回のおさらい)
ここまでを踏まえてもう一度、プラズマのRIEでの役割を整理します。
プラズマ中のラジカルは中性の活性種であり、方向性は制御されておらず(電場に沿うような動きをしない)拡散(自発的に広がる)し、その先のウエハ表面・側壁の材質次第では非常に良く反応するので等方性エッチング寄りになります。こちらはウエハに衝突して表面原子を物理的にはじき飛ばすのではなく、表面原子と化学的に反応し、揮発性反応物を生成して脱離することで削れる化学エッチングです。
プラズマ中のイオン(正イオン)は、シース電界でウエハ表面にほぼ垂直に加速し、表面の結合を解離し、活性化させることは先ほどは説明した通りです。イオンが縦方向に叩きつけられる物理エッチングで、結果的に異方性エッチング寄りになります。
RIEは、この2つが組み合わせることで、深さ方向(垂直方向)に真っ直ぐ削る異方性と、材料間の選択性の両立を実現できます。
まとめ
今回は、RIEにおけるプラズマを
- プラズマをどう生成するか(ガス・電源・真空)
- 生成されたプラズマ中の何が、被加工物の表面をどう削るか(自己バイアス・シース・イオン/ラジカル)
最後にプラズマを必要な場所だけに閉じ込めるにはどうするかという点からシールドと等電位面についてまとめます。
出典
前田和夫(2022)『はじめての半導体プロセス』技術評論社
前田和夫(2011)『はじめての半導体製造装置』技術評論社
Semi journal『【ドライ/ウェット】エッチング工程とは?原理と装置の構成』
https://semi-journal.jp/basics/process/etching.html(閲覧日:2025年11月27日)
関根誠(2007)『プラズマエッチング装置技術開発の経緯,課題と展望』プラズマ・核融合学会誌 Vol.83, No.4
節原裕一(2010)『プラズマの生成と制御』プラズマエレクトロニクス分科会会報No.52 p19-34


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