ご指摘をありがとうございました。
いただいたコメントをきっかけに、”load lock”という言葉の本来の構造を再度確認しました。
前回のブログでは、主にパージガスの流れ(discharge)に焦点を当てていました。
そのため、”load lock”という装置名に含まれるloadの働きを、意識の外に置いたまま、読んでいたことに気付きました。
「ロードロック」であって、「ロック」ではない
ロードロックは、load+lockの複合語です。
loadは、
fill (a vehicle, ship, container, etc.) with a large amount of something
(参考訳:(乗り物、船、コンテナなど)を大量の何かで満たす)
またlockは、
a mechanism for keeping a door, window, lid, or container fastened
(参考例:ドア・窓・蓋またはコンテナが密閉される機構)
(出典:Oxford Dictionary)
つまりロードロックとは、圧力差のある空間をつなぎつつ、ウエハの積み込み密閉する装置です。積み込みと密閉が同時に起こっており、この両方の意味が、装置名にきちんと組み込まれていました。
前回の記事ではこのloadのニュアンスが抜け落ちており、装置の両機能に対して等しく意識することができていませんでした。
工程と動詞
ロードロックを複合語として見直すと、工程と動詞の関係が少しはっきりします。

再掲(出典:「ロードロック室排気の省電力化」(Vol. 58, No. 7, 2015))
ウエハをロードロックに搬入する場合(上図:大気圧(ピンク)⇒真空(黄色))
1.ロードロックを大気圧に戻す - charge
2.ウエハを、大気圧環境下からロードロックに搬入する – load
処理後、ウエハをプロセスチャンバから搬出する場合(上図:真空(水色)⇒大気圧(黄色))
1.ロードロックを真空引きにする – evacuate
2.ウエハを、真空環境下からロードロックに搬入する – load
装置名を動詞化して読んでみると、ロードロックは、装置そのものの機能を端的に表した言葉であることが分かりました。
discharge、exhaustとの関係
これに関連して、先日整理したdischargeとexhaustとの関係も改めて考えてみました。
– discharge:チャンバ外からパージガスをロードロック内へ吐出、
ーexhaust:チャンバ内のガスをチャンバ外へ排出する、
どちらも、ガスの流れを指す動詞で、矢印の向きが逆です。
これに対して、(この明細書では出てきませんが)
chargeとexhaustは、ロードロック内の圧力状態を変化させる操作です。
– charge:大気圧に戻る(加圧)、
– evacuate:真空引きにする(減圧)、
当初は、dischargeとchargeとが対義語に見えたため、同レベルの動作だと誤解していました。
しかし実際には、dischargeは局所的なガスの流れを指し、chargeはロードロックの圧力変化を指しており、この2つは異なるレベルの動作だと理解すると、整理がつきました。
感覚としては、以下の図のようなイメージです(あくまで概念的なものです)。

辞書の定義だけでは、このような対象とその視点をどう置くのかを切り分けて読むのは難しいと実感しました。学習素材としては、もう少し整理を進めてみます。

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