出典:WO2021173154(Lam Research)
”REDUCTION OF SIDEWALL NOTCHING FOR HIGH ASPECT RATIO 3D NAND ETCH”
(Lam Research)
本明細書には、装置制御やプロセス設定に関する表現が多く登場します。
その中でも特に最も迷いが生じたのは、用語の統一に関する判断でした。
そこで今回は、本明細書のメインの部分よりその前提となる全般的な箇所で頻出した、fabricate/manufacture、process/processing、および慣用表現 claim benefit of priority to、について整理します。いずれの用語も、翻訳作業と公開訳との比較を通じて、理解が深まったものです。
用語:fabricateとmanufacture
本明細書ではfabricateが頻出します。多くは「製造」の意味で使われています。また、”fabrication and/or manufacturing of semiconductor wafers“のように両語が並列で使われている箇所もあります。
これまでは「同一語は同一訳」「異なる語は極力訳し分ける」ことを原則としてきました。
ですが、”a partially fabricated 3D NAND structure”や”in a common fabrication facility”のような文脈では、どちらも同じく製造過程を指しています。無理に訳し分けようとすると(例えば加工と製造など)、日本語として不自然になってしまいます。
また2つの語を英英辞典で確認すると、「過程」「量産」と焦点に違いはあっても、どちらも「製造」という上位概念に含まれると考えます。
fabricate:construct or manufacture (an industrial product), especially from prepared components
manufacture:make (something) on a large scale using machinery
(出典:Oxford Dictionary)
指示があればそれに従うのが大前提ですが、日本語では無理に訳し分けず、「製造」に統一する方針としました。そのため、”fabrication and/or manufacturing“は、シンプルに「半導体ウエハの製造」としました。
なお、公開訳では「製作または製造」とされています。「製造」は、「原料を加工して大量に物を生産すること」、「製作」が「道具・機械を用いて物品を作ること」という意味で使われています(出典:類語例解辞典)。製作のほうが少量・個別的なニュアンスを含みますが、本明細書では量産かそうでないかという違いよりも、工業的工程で作られるという点に焦点が置かれています。そのため、いずれもmanufactureの意味で使われていると考え、「製造」に統一しました。
用語:process/processing
processとprocessingは、一見似ていますが、文脈によって意味が異なります。基本的には、processは工程全体を示す「プロセス」、processingは個別の操作(動作)を指す「処理」と訳し分けました。ただしこの訳のみだけでは曖昧な場合も多く、文脈に応じて対応が必要となる箇所も多くありました。
具体的に2つほど取り上げます。
例1
A suitable apparatus includes hardware for accomplishing the process operations and a system controller having instructions for controlling process operations in accordance with the present embodiments.
試訳:好適な装置は、本実施形態によるプロセスの各工程(処理動作、に修正)を実行するハードウェア及びプロセスの各工程(処理動作、に修正)を制御する命令を行うシステム制御部、を備える。
公開訳:適切な装置は、本実施形態による処理動作を制御する命令を含む処理動作およびシステムコントローラを実現 するためのハードウェアを含む。
ここでの文全体の構造は、公開訳と違い、
apparatus(装置)がhardware(ハードウェア)とsystem controller(システム制御部)を有する、
という形だと考えます。
一方”process operation”の訳語選定には迷いがありました。
プロセスの各工程、と訳したのは、ここでいうprocessが例えばエッチングプロセス全体を指すとすると、”process operatoion”はこのプロセスを構成する要素(例えば、基板搬入やプラズマ発生等)、と理解していたためでした。operationとはあるものの、操作や動作といった具体的な作業や機械的な動きよりもう少し工程のような1サイクルのニュアンスだと考え「工程」を選んだのですが、「プロセスの各工程」としてしまうと、その意図よりも、重複した用語を重ねた違和感の方が強かったです。
明細書の後段で、
“… the controller receives instructions … which specify parameters for each of the processing steps to be performed during one or more operations.”(制御部は、1つ以上の動作/操作(operarion)の際に実行される各プロセスステップのパラメータを特定する命令を受信する)とあります。
この文脈から、”process”がプロセス全体(例:エッチングプロセス)、”process operation”がその中の1サイクル(例:プラズマ生成)、”process steps”がoperationを構成するより細分化した手順(例:ガス導入・RF印加等)という階層になっているのだと理解しました。
再度訳語を考えると、”process operation”を「処理操作」、”process steps”を処理ステップとするのが、最適かと考えます。
明日に続きます。
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