分かったつもりの電気機械

black sailboat on sea during daytime 記録

分かったつもりの落とし穴

明細書を読んでいて、なんとなく分かった気になり読み飛ばしてしまった言葉に後で気づいた経験はないでしょうか。

私にとっては「電気機械」がそのような例でした。この用語を深く考えず翻訳学習を進めた結果、誤った訳に至りました。今回のミスを振り返り、記録します。

電気機械とは

電気機械とは、一般的に「電気を動力源として動作する機械又は装置」を指します。電気機械式”electromechanical”をMarriam-Webster(オンライン辞書)で調べると、次のように定義されています。

of, relating to, or being a mechanical process or device actuated or controlled electrically; especially: being a transducer for converting electrical energy to mechanical energy.

つまり、
電気的に制御される機械的なしくみやデバイス
・特に、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する変換器、ということです。

前者の例としては、しくみとして電子ピアノの自動演奏、デバイスとしては冷蔵庫が挙げられます。

電気機械の具体例

後者のエネルギー変換器についてもう少し広く見てみると、電気機械には2つの主要な変換の方向があります。

1.電気エネルギーを機械エネルギーに変換するもの 例:モーター

-特開2023-160558(清水建設)

電気機械とは、電気を動力源として動作する機械又は機器である。例えば、電気機械は、杭打機、回転体、油圧ショベル又はクレーンなどの建設機械等の作業用機械であってもよい。電気機械は、工事現場にて設置されている分電盤、制御盤又はセンサであってもよい。

2.機械エネルギーを電気エネルギーに変換するもの 例:発電機

(2)機械エネルギーを入力し、電気エネルギー・信号として出力する装置。

-特許5539315号(パーペトゥームリミテッド)

本発明は、機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する電気機械発電機(electromechanical generator)、及び、機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換する方法に関する。特に、本発明は、例えば知的センサシステムへの給電に使用するために、環境振動エネルギー(ambient vibration energy)を電気エネルギーに変換することが可能な小型発電機であるデバイスに関する。

大きな概念にどう対応するか

J-platpatで検索項目を「電気機械」として調べると、検索項目「明細書」内で80774件ヒットしました。

それほど一般的に使われる用語ですが、今回和訳を通じて初めて理解していないことに気づき、調べ直しました。「電気」「機械」という当たり前の単語の組み合わせに見えたため、これまで深く考えずに言葉を読み流していたこと、何より、具体例をイメージしなかった:抽象的な概念を、具体的なしくみ・装置と結びつけていなかったこと、が原因だと考えます。

その結果、例えば「AはB及びCを備えるが、Cには特にDやEがある。」という文章において「電気機械式の」という用語がEだけにかかるのか、DとEにかかるのか、という点を理解せずに訳することへとつながりました。

電気機械などは非常に概念が大きく、包摂する範囲も、書かれた文脈によって大きく違いますが、そういう場合こそ、その場面での具体例をイメージすることを再度、肝に命じました。

おわりに

今回のテーマから、改めて「アウトプットをしないと、理解のあやふやさに気づけない」ことが身に染みました。翻訳作業を通じて、こうした気づきを活かし、より深い理解を目指して取り組みます。

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